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男塾の描写練習をしていきます。 ツッコミ歓迎コメント歓迎
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「桃、目を…閉じてくれや」
「!……フフッ」
どきん
どきん
どきん
どきん

ヘヘへッ
ヘヘへへッ
「………」
「もーもっ!キスしよ!なぁん…」

なぁんて、いいかけた富樫は固まる。
何がなんだかわからない様子で、桃は子供のように頼りなげな瞬きを繰り返していた。

そうしてようやく自分がからかわれたらしいことに気付いたようで、
「………そうか、からわれちまったのか……」
切なそうに、
寂しそうに、
悲しそうに、
目をそっと伏せて微笑んだ。
「も、桃!」
沸き上がる罪悪感に、富樫は慌てて声を上げた。
「いいんだ、……フフッ、俺がお前に?フフッ……」
「す、すまねぇ、桃!」
「………」
「……今度は、目を閉じなくていいからよう」
「ああ」









ちゅー
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日本家屋は風通しが良い、だから冬の隙間風をしのげば後は年中快適である。
おおむね同意していた私だが、近年の殺人的酷暑にこの論にそろそろ意義を唱えなければいけないだろう。
ワイシャツの首筋はじっとり湿り、脇も大変心地悪い。不快である、子供のように立場が無ければ適当に綿の、袖ぐりの広くて風通しのいい服でも着ていられるのだろうに。

こうして今日も大変な不機嫌顔で、伊達組家事取締役筆頭仏頂面はシャツの袖をまくって意気込んだ。

 

昨年がとても暑かったでしょう、覚えていらっしゃいますか?そうですね、死者が出るほど暑かった昨年。
私もさほど若くはありませんが、外回りの営業さんやお年寄りやお子さんにはさぞ辛い季節でしょう。
さて、私も住まわせていただいている伊達組組長の自宅は職人さんが子供を育てるように作り上げた日本家屋なのです。風通しや日当たりがよく考えられていて、布団やシーツに寝巻きなどがすぐにパリッと乾いてとてもいいですね。
畳も出入りの職人さんに任せて替えていただいているので、肌心地も抜群です。干しあがった布団はその畳に広げておくと熱が畳と風にすっかり吸い取られて、寝苦しいという事はありません。
そういう訳で、この家には冷房機器というものはありませんでした。暖房器具はありました、私は腰が弱いものですから調理場に石油ストーブ。組長は股に抱え込んで使うゆおな小さいあぐら火鉢。お客様の部屋には一応ストーブは入れていましたね。
冷房機器を買ってはどうか、と私が進言いたしましたのは、一つは年年次第に強まる暑さ、暴力的な酷暑を懸念しての事です。
そしてまた、これはあまり申し上げにくい…というか申し上げると私が怒られる、お客様のためなのです。
そのお客様を私としては歓迎したいですが、実は先日ですね。


「アッチィのー、のォ伊達ェ、ケチらんとクーラーつけんか」
「フン、」
馬鹿にしようとしたってここまで馬鹿にした顔は出来ないだろう、というほど人を馬鹿にした顔。そんな顔でフフンと鼻で笑い、
「うちにゃクーラーは無ェ。俺は別に暑かねぇし、なにより」
ナニナニ?と近寄ってきた相手から暑苦しそうに身を引いて、
「暑苦しい馬鹿の溜まり場にされたらたまらねぇからな……馬鹿避けにゃちょうどいいぜ」
「だ、誰が暑苦しい馬鹿じゃい!!アッタマきた!」

フフフン、嫌味なほどにいい男。しかしいい男の部分を差っぴいたらただの嫌な男。
そうして客人はプリプリブカブカ怒って帰ってしまったのでした。
客人、虎丸様。私は障子の向こうのやり取りをはらはらしながら聞いていましたし、手にした塗盆には立派な黒玉スイカの厚切りをいつお出ししようかタイミングをすっかり逃してしまったのです。
客人が帰ってしまったせいで結局組長がせっかく取り寄せたスイカの出番は無く、
「虫にでもくれてやれ」
組長に不機嫌そうに言われ、見習いさんが飼っていたカブト虫の贅沢な餌と成り果てたのでした。もったいないので私と見習いさんもそのおすそ分けに預かりましたけれども。美味しかったです。

という訳で、私は組長に冷房機器を入れてはどうでしょうかと進言することにしたのでした。

燃え尽きて超微粒子になれ

「お前を全て貰うことにした」
細胞一つ一つまでもを愛すと伊達にいけしゃあしゃあと言った桃に、
「…俺には何一つくれねぇってのに、ごうつくだな」
「そうか?お前は俺のことを全然欲しいとは思っていないんだろ?」

ふふふん、伊達がひそやかに笑った。
「そう見えるかよ」



「穴の生まれだぜ?強欲に決まってんじゃねぇか」
「見習いさん、ちょっと組長の部屋の床の間に飾る花を買ってきてください」
「はーい、フラチューいってきまーす」
今日も暑い。




「くーださーいな!」
坊主頭に眼帯の、人相の悪い男が愛想のカケラも無い顔でのそのそと出てくる。
「うちは駄菓子屋じゃねえぞ、見習い」
「えーと、と、トコヤに飾る花ください」
「トコヤ?…総長は理髪産業にも手を出したのか?」
「わっかんね!」
「ガキの使いじゃねえんだぞゴラ」
「親分に飾る…んじゃなかったっけかなー」
「総長に!!?」


このとき、フラチューこと、フラワーショップ忠義店主森田大器(フラワーアレンジメント免許取得、表千家いけばな師範代)は、
芸術的にひねりをくわえたポーズを取り、イチヂクの葉で股間を隠したのみの全裸の伊達組組長伊達臣人に、どう花を飾りつけるのか想像したのはナイショである。



そうして結果としてフラチューこと、フラワーショップ忠義店主森田大器(フラワーアレンジメント免許取得、表千家いけばな師範代)は情熱的に、滴るほどに真っ赤なバラでもって豪勢な花束をこしらえて見習いに渡した。
「ありがとうございます」
「おう、ホトケさんにもよろしくな」
「(ホトケ…仏頂面さんかあ…)はーい」




「どこの世界に、床の間にバラ活ける奴がいるってんだ!」

びゅん!
見習いの鼻先に、バラが一輪飛んできた。頭を抱えて見習い、尻尾を股に挟んだ犬の如くに震え上がる。
震え上がってちぢこまっていればいいのに、どうしてか余計な事を言ってしまう。
「で、でも口にくわえて、オーレィ!ってやっても格好いいですよ!」
「どこの世界にバラくわえて踊る組長がいるってんだ!」
ますます怒られた。


「アンタ、伊達組さんになんの花渡したの?」
「おう、総長は男の中の男…ソノ上伊達男でいらっしゃる。伊達男ときたらバラ、それも真っ赤だ」
「アラヤダこの時期あつっくるしい」
「てめぇなら何差し上げるってんだよ、女女しい花なんか差し上げられっか」
「あたしなら?そうねぇ…」
「ところで、保護者会どうだったんだよ」
「ああ、そうそう…」
「アバンチュールがしたかったんだろ?」
「………おう」
富樫は小さく頷いた。
「アバンチュールってのは英語で言うアドベンチャーで」
「へぇ」








富樫は今まさに断崖絶壁にある。
一応アドベンチャーであった。
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