「桃の節句が終わったと思って、油断していたな?」
桃は楽しげに言って、伊達の首元からネクタイをシュッとヘビを扱うように鋭く取り去った。
「わざわざそれで、四日になるのを見計らって来たのか………」
「そうさ、お前の驚く顔が見たかったんだ、伊達」
はっきり言い放つと、桃は快活に笑う。なんの曇りも迷いもないあかるい笑顔だった。
伊達はもはやあきらめの体で、ため息混じりに、
「お前は嫌がらせの天才だよ…」
「天才は忘れた頃にやってくるのさ、そうだろう?」
桃に口で勝てるわけもないのだ。
舌を抜けるほど吸われながら、伊達はぼんやりと陥落した。