赤石嫁

嫁なので後半に隠します。

「ぶらんぶらんさせて、いただけないかしら」
初対面の次を何対面と言うのか知らんが、とにかくその二度目でその丸顔の女はこの俺にそう言った。
あまりにしつこく頼むので腕を差し出してやると、時間をかけて着付けてもらったに違いねえ着物のまま飛びついてくる。
俺の腕に全力でぶら下がってはしゃぐその丸顔が満足するまで、もとい力尽きるまで日本橋から築地まで歩いてやった。おい貴様等ものめずらしげに見るんじゃねえ斬られてえのか。
丸顔がもう許してって言うまで俺もとことんに歩いてやった。後で思えば俺も馬鹿だったかもしれん。
だが丸顔より先に「下りてくれ」などと言うのは俺の誇りが許しやしねえ。
結局築地まで丸顔をぶら下げて歩いた末、
「剛次さん、草履をなくしてしまったわ」
などと本気でたった今気づいたらしくのたまう丸顔に安物の便所サンダルを履かせ（金は俺が出した）、寿司を食い（ワリカンだ）、
「剛次さん、玉子焼き食べましょう」
と言うので材木ほどある玉子焼きを買ってやり（出来立てをそこで待った）、二人で食って（その場で）帰った。