男塾の描写練習をしていきます。
ツッコミ歓迎コメント歓迎
きょうの芋煮は具合がいい、
出来栄えに富樫が一人満足を覚えていた背後でゆらりと清らな気配が立ち上った。
「美味そうな芋煮じゃねぇか、どれ」
ひょい、熱熱の鍋から芋を摘んだ指先は男らしいが粗野ではなく、すらりとしている。
ぱく、頬張った口元は既に甘くほのかに笑んでいる。
振り返って富樫、
「てめぇ桃コノヤロウ、いつ入ったんじゃい」
「今さ。美味いぜ、味が良く染みてる。さ、飯にしよう」
「コ、コ、コノヤロウ…晩飯タカリに来やがって、それも毎日じゃ!!」
「……フ」
「ぬぁにがフ、じゃ。ああ?てめぇ、毎晩飯半分もってかれる俺の身になりゃあがれ!」
「わかってねぇな、富樫。俺がどうしてここに来たのか」
「ああン!?」
「お前の飯を食いに来たわけじゃ…いや、確かにお前の飯も食いてぇさ。だがな富樫、」
桃の指が伸びた、富樫のチョビ髭、そこに味見の際についた芋のかけら。それをそっと親指でぬぐって、自分の口元へ。
目さばきの颯颯とした、凛凛しい男前が笑う。
「お前『の』飯じゃなく、お前『と』が目的さ。まったく野暮だな、おかげでフッフフ言わされちまった」
「ヌグッ…!!」
今日も晩飯分け合って。
出来栄えに富樫が一人満足を覚えていた背後でゆらりと清らな気配が立ち上った。
「美味そうな芋煮じゃねぇか、どれ」
ひょい、熱熱の鍋から芋を摘んだ指先は男らしいが粗野ではなく、すらりとしている。
ぱく、頬張った口元は既に甘くほのかに笑んでいる。
振り返って富樫、
「てめぇ桃コノヤロウ、いつ入ったんじゃい」
「今さ。美味いぜ、味が良く染みてる。さ、飯にしよう」
「コ、コ、コノヤロウ…晩飯タカリに来やがって、それも毎日じゃ!!」
「……フ」
「ぬぁにがフ、じゃ。ああ?てめぇ、毎晩飯半分もってかれる俺の身になりゃあがれ!」
「わかってねぇな、富樫。俺がどうしてここに来たのか」
「ああン!?」
「お前の飯を食いに来たわけじゃ…いや、確かにお前の飯も食いてぇさ。だがな富樫、」
桃の指が伸びた、富樫のチョビ髭、そこに味見の際についた芋のかけら。それをそっと親指でぬぐって、自分の口元へ。
目さばきの颯颯とした、凛凛しい男前が笑う。
「お前『の』飯じゃなく、お前『と』が目的さ。まったく野暮だな、おかげでフッフフ言わされちまった」
「ヌグッ…!!」
今日も晩飯分け合って。
「伊達。俺はお前の足を舐めることだって喜びを味わうだろう」
「馬鹿野郎」
伊達の声には切実さがある。
自分を打ち負かし、同級生だけではなく先輩や敵にすらその器の大きさから一目置かれる男、
そして自分があこがれてやまない男に発してもらいたい言葉ではなかった。
首を振る伊達の頬へ、桃はやさしく手のひらをあてがった。
ふんわりとやわらかそうな触れ方とは違い、ダンビラを振り回すその手のひらには当たり前にタコやマメで硬い。
伊達は首を横へ振った。
「てめぇはそんな馬鹿を言ったらいけねえ」
「どうしてだ」
「どうしてもだ、桃――頼むから俺を失望させてくれるな」
「お前を好いているんだ。伊達、俺はお前に跪いたってかまわない、お前が望むなら」
「嫌だ」
そんなことして欲しくなかった、伊達がまぶしく思う男でありつづけて欲しかった。
まぶしい輝く太陽が接近してみれば汚い黒点にまみれていることに気づくようなことは、したくなかった。
遠巻きに、胸を高鳴らせていたかった。
だが桃は許さない、
「どうしたらお前のものになれる?」
詰め寄った桃の顔に酔狂はない、それが伊達にはわかるだけに悲しみと喜びは入り乱れる。
「てめぇをものにしてぇなんて、思ったこともねぇよ」
「俺はお前のものになりてぇのさ。……お前もそれを望むだろう?」
「望んでやしねぇ」
俺を好きになってくれ、
叫びだしそうな渇望の胸のうち。伊達は胸を押さえた。
省みられるにはあまりにも汚れすぎている。泥にまみれ、腐肉をすすったこの体。
桃でなければ、自分の人生に引け目など感じることはない。
引きずり倒されるような感情のままに、伊達は背を向ける。
その背に桃がすがりついて、額を擦り付ける事に無上の喜びが寄せた眉ににおう。
「桃、」
伊達が最も傷つく、ずるい手を使う。
それでもなお、桃は伊達が欲しかった。
「馬鹿野郎」
伊達の声には切実さがある。
自分を打ち負かし、同級生だけではなく先輩や敵にすらその器の大きさから一目置かれる男、
そして自分があこがれてやまない男に発してもらいたい言葉ではなかった。
首を振る伊達の頬へ、桃はやさしく手のひらをあてがった。
ふんわりとやわらかそうな触れ方とは違い、ダンビラを振り回すその手のひらには当たり前にタコやマメで硬い。
伊達は首を横へ振った。
「てめぇはそんな馬鹿を言ったらいけねえ」
「どうしてだ」
「どうしてもだ、桃――頼むから俺を失望させてくれるな」
「お前を好いているんだ。伊達、俺はお前に跪いたってかまわない、お前が望むなら」
「嫌だ」
そんなことして欲しくなかった、伊達がまぶしく思う男でありつづけて欲しかった。
まぶしい輝く太陽が接近してみれば汚い黒点にまみれていることに気づくようなことは、したくなかった。
遠巻きに、胸を高鳴らせていたかった。
だが桃は許さない、
「どうしたらお前のものになれる?」
詰め寄った桃の顔に酔狂はない、それが伊達にはわかるだけに悲しみと喜びは入り乱れる。
「てめぇをものにしてぇなんて、思ったこともねぇよ」
「俺はお前のものになりてぇのさ。……お前もそれを望むだろう?」
「望んでやしねぇ」
俺を好きになってくれ、
叫びだしそうな渇望の胸のうち。伊達は胸を押さえた。
省みられるにはあまりにも汚れすぎている。泥にまみれ、腐肉をすすったこの体。
桃でなければ、自分の人生に引け目など感じることはない。
引きずり倒されるような感情のままに、伊達は背を向ける。
その背に桃がすがりついて、額を擦り付ける事に無上の喜びが寄せた眉ににおう。
「桃、」
伊達が最も傷つく、ずるい手を使う。
それでもなお、桃は伊達が欲しかった。