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伊達は鎧兜を部下に用意させた。
おぼつかない手付きで伊達へその鎧兜を装着させていく、なれないせいか三度やりなおした。
(仏頂面め、部下のしつけぐらいしておけ)
軟弱にも伊達組家事取締役筆頭仏頂面は数年前に他界していた。
他界して初めて伊達は仏頂面が自分よりも年下だった事を知る。そうした付き合い方をしていた。

鎧兜と、それから学ラン、どちらにしようか迷った。
が、先日桃がフラリと現れて、

「俺はあの真っ白い学ランだから、すぐにわかるだろうぜ」

そう告げた。初めてまみえたあの時を再現するのなら、やはり鎧兜。
伊達は背筋を正して座した。

「俺は死ぬ。後は書き置いた通りにしろ、くれぐれも派手な葬式は無用だ」




涅槃で、桃がまどろんでいる。それがもう間近に風景を透かして見える。
自分はこれからあそこへ行くのだ、行って、待ちわびているだろう桃を起こしてやらねばならない。

部下は見た、息を引き取る寸前の伊達はハッとするほど若若しく激烈な気を、世の中に刻み付けるようにして放ったのを。


部下は見た。
鎧飾りを鳴らしながら駆けていく男を。
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