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「あさましくも私は、貴方に愛玩されたいのですよ、邪鬼様」

影慶は密かつぶやいた。
同志として見てもらえなくともいい、
信頼できる部下でなくてもいい、
ただ、愛玩されたいだけ。

そうつぶやいた。
伝えるには臆病過ぎる、そのためこうして時折転がしては弄んでいる。
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時候の挨拶から始まり、身の回りで起こった物事に触れ、それからまた近いうちに会おうという言葉で締めてある。

簡潔な手紙だった。
だが、伊達の好む色の紙を選び、わざわざ硯を寄せて、緑深い綾なる墨をたっぷり使って文字を綴ってある。
手間と、時間をかけて。

電話もある。
誰かに言伝てを頼んでもいい。
しかし桃は伊達へ手紙を送る。
何より伊達を震わすのは宛名、つまり伊達の名前。
その宛名が時折はやるように流れ乱れていたり、
また緊張しているようにかくばっていたり、

まるで今伊達を目の前にして呼んでいるようであった。
伊達の書斎のひきだしには、こうした手紙が詰まっている。
「恨めしいとは思わねぇ、……だが」

伊達はその手でびりびりと紙を縦に引き裂いた。さらに半分に、たたんで細切れに。
ただの仕掛けもない指が、ほぼ均一な大きさの紙片を作っていく。
伊達の眼差しは壁にぼうやりと投げられており、焦点が定まっていない。

「……住民票、か」

やけに明るい声で伊達は言った。


ふっ、
伊達が強く息を吹き掛けると、窓からはらはらと紙吹雪になったパスポート発行申込書がきりもみしながら飛び立っていった。
「あっ!わしのビールがない!伊達、知らんか」
「ああ、飲んだ」
「なにーっ!?こ、この泥棒猫!泥棒猫!」
「痴情の縺れみてぇな言い方はよせ!」

仕方なく酒屋に走る伊達であった
邪鬼が眼を伏せている様は、たいへんに静かだ。

鏡水面のように、心地よい緊張感に満ちた静寂をまとっている。

その領域に影慶は存在を許されていた。
異物ではなく、空間の一部に溶け込んでいる。

果てぬ静けさに、影慶はただ睫毛を震わせた。
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