おおみそか4

「あ、除夜の鐘…」
ベルリンが身を潜めた茂みの中で呟く。
隣の卍丸が小声に指示を出す。
「あれがターゲットだ、全部で30人ぐらいはいるか…殲滅だ」
「はい」
「傘は使えねぇから、肉弾戦になる。無茶はやるな、む」
「無理はします」

卍丸は笑った。獰猛な犬のように笑った。
「いい子だ。終わったらソープに直行するぜ」
「煩悩全然減りませんね」


「おうよ、たかだか108じゃあな」

おおみそか3

「じいちゃん！あけたッ！」
お年玉おくれ、と12時きっかりに跳ね起きてきた孫を、


富樫の血筋だなぁと感心した桃である。

おおみそか2

「…ん？」
「…どうした…」
「伊達、いつの間にか年が開けているぞ」
「いいから、とっとと…！」
「フッフフすまん、辛抱させたな」
「てめぇという奴はっ…」

語尾が震えた。

おおみそか

「今年が終わるな、富樫」
「そうだな、桃」

お互い盃をぐいとあおって、青い月夜に笑み交わす。

恥をしのんで

恥をしのんで羅刹は言った。
「伊達、俺を…その、…ち、父と思ってもいいのだぞ」
伊達は盛大にビールを吹き出した。
「あ、あんたが父って柄か！いいところお袋だろうが」

割烹着姿で土鍋かかえた羅刹は、そういうものかとつぶやいた。