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本来のつかいかた、
お稽古です。
モモトガエロ練習

+ + + + + + + + + +
桃の指以上に気持ちのよい指を、富樫はほかに知らない。
中指の背中、ぼこりと目立つ節が富樫の痩せた頬をゆるやかに滑り降りて、首筋に太く張った腱を辿る。
それだけでまぶたが自然と伏せられ、ああと喉の奥から掠れた声が絞られ出るのだ。
その硬い節が更に鎖骨の窪みを探り、谷間などどこにも有りはしない胸の真ん中、筋肉同士が成した道を進む。くつろげられたシャツの隙間、中程まで指が降りればもう頭はのけぞりかけて、桃の肩に自然に持ち上がった震える両手が添えられてしまうのだ。

指先から何か出ているのではないかと、富樫が疑うほどにである。
富樫の肌を温め、火照ってからはひやりと冷たく、的確に富樫を押し上げる。その指に、たまらなく富樫は乱された。


「…、桃」
富樫は自分の声に驚く、まるで甘ったれな、とろけっちまいそうに濡れた声である。
「そんな声出すな…可愛がりたくなる」

もう十分過ぎる程に、桃は富樫を可愛がっている。まさに可愛がりであった。

というのも桃が我を通すのは最後の最後だけ。どんなに桃自身がズボンの前を窮屈に押し上げようが、決して無理強いはしない。
その指も言葉も舌も、眼差しですら、ただ富樫を慈しむ、愛でる、可愛がるために惜しみなく捧げるのだ。
そうして富樫がすっかり溺れ、桃を声で腕で脚で、眼差しで求めてから、はじめて桃は押し入る。

それが富樫にとっては、愛しさを感じもするが、それ以上に不満でもある。

富樫がとろとろにとろけてから、恥も何もなく桃を呼ぶまで動いてくれないイケズを恨む。
しかしそれ以上に、してほしいのは奉仕ではないのだと胸に歯がゆさを燃やした。
そんな丁寧にされなければならないほどにやわには出来ていない、むしろ並みより頑丈である。
ならば、


そろならもっと、
そうじゃなくもっと、

富樫は桃にどうされたいのか。
どうして欲しいのか。

上手く回らない口が、適切な言葉の浮かばない頭が酷くもどかしい。
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