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桃富樫エロ練習

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「違ぇ、桃」

富樫の口は上手く回らない。

「何が良くない、こんなにしておいて」

安いアダルトビデオのような物言いに、富樫の顔が歪む。
内容にではない、
富樫が言いたいであろうことを、富樫以上に把握しておいて、わざとそんな取り違えをする桃をである。

「そうじゃねぇ、桃…俺ァ」
言葉を懸命に捻りだそうとしているのに、桃の指が絶え間無く富樫を愛すものだから、言おうとしていた言葉は散散と消えてしまう。
さんざん息を乱して、

「もっとてめぇのしてぇように、したらどうなんだ」

そう言った。それしか言えなかった。

「…なんだ、もっと?」

また、わざとだ。


殊更富樫の羞恥を引き出そうと、意思をしっかり持った意地の悪い微笑み。それから指がくるりと薄く柔らかい皮膚を捻る、富樫の口から言葉でなく悲鳴を引き出そうと賢く動いた。



違う、
違う、
違う、


違う、
そうじゃない、


「桃てめぇ、俺の事なんか、なんでもわかんだろ、…そんなら、そんなら、わかれよ」

富樫の声は真剣だ。
桃がどんな富樫の真意を知っているのか、富樫自身は知らない。

しかし、桃がわざと富樫の真意をはぐらかしたのはわかる。それがわかるほどには、富樫は桃を慕っている。

「無茶苦茶を言う…ほら、こう」
「違う」


違う、
「どうして俺の言うことばっかり、聞くんじゃ」
「そんなことはねぇ、だから――止めろって言われようが、する」


それを本当に、桃がしたいのなら富樫はなんだって良かった。抗うのも、受け入れるのも、そこに二人の意志があるなら良かった。


「桃、てめぇは――馬鹿じゃ」
「もっと」
鋭く桃は要求した。
「……馬鹿野郎」



それでも富樫に出来るのは、その馬鹿野郎のわけのわからん意地が解けるまでひたすらに、馬鹿野郎に付き合ってやることだけである。それをしてやりたいと富樫は強く願う。



「おう、どんと来いや馬鹿野郎」
富樫は唇を、桃の額に触れさせた。

雲間の三日月、かそけき笑みが一瞬瞳に宿る。

一瞬だ。


その笑顔が新月になると同時に、桃は深く押し入ってきた。
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