酷く傷ついた富樫の顔を、桃は知っている。
眉を僅かに寄せて目を伏せ、辛さと痛みが伺える顔。
その顔にはほんのかすかな笑みがある、
自嘲の笑みである、
「あぁ、やっぱり」
虐げられ、疎んじられ続けた彼の悲しみはいつしか諦めに歪む。
桃はやりきれない、無言で富樫を抱いてやりたいと思いながらも歯噛みするばかり。
桃の労りは、今の富樫には受け止めきれない。
憐れみと取るか、
馬鹿にされたかと取るか、
「諦めるんじゃねぇ、富樫。大丈夫だ、大丈夫だとも、富樫、お前なら、だから」
諦めないで、
いつでも、俺だけはそばにいるから。
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