「邪鬼様、休憩しましょう」
影慶が盆に湯のみと菓子をのせてやってくるのはちょうど三時。
邪鬼が顔を上げた、
「今日の菓子はなんだ」
「豆大福です」
ただ黒漆に濡れた静かな皿の上に、豆大福が素朴に山と積みあがっていた。
分厚い白い皮に、豆がうすく透けて影色がところどころ。打ち粉がぜんたいにきしきし言うほどふってある。
邪鬼のためにこしらえたのだろう、どれもサイズが大人の握りこぶしのようだった。
「うむ」
邪鬼は影慶の持ってきた手拭で手を清めると山の頂上を掴んだ。
打ち粉が唇の周りを汚すのもかまわず、わし、とほお張る。
行儀の悪さがなぜか高貴に見えるのだから邪鬼という男は底が知れない。
「うむ」
あまさ、塩加減、皮の弾力、どれも申し分ない。
そう言うと、ほっとしたように扉の向こうで羅刹が息をついた。
影慶が盆に湯のみと菓子をのせてやってくるのはちょうど三時。
邪鬼が顔を上げた、
「今日の菓子はなんだ」
「豆大福です」
ただ黒漆に濡れた静かな皿の上に、豆大福が素朴に山と積みあがっていた。
分厚い白い皮に、豆がうすく透けて影色がところどころ。打ち粉がぜんたいにきしきし言うほどふってある。
邪鬼のためにこしらえたのだろう、どれもサイズが大人の握りこぶしのようだった。
「うむ」
邪鬼は影慶の持ってきた手拭で手を清めると山の頂上を掴んだ。
打ち粉が唇の周りを汚すのもかまわず、わし、とほお張る。
行儀の悪さがなぜか高貴に見えるのだから邪鬼という男は底が知れない。
「うむ」
あまさ、塩加減、皮の弾力、どれも申し分ない。
そう言うと、ほっとしたように扉の向こうで羅刹が息をついた。