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さて桃はどうくるか、伊達は懐から腕を出し人差し指と親指で顎をつまむ。
おおかた大嫌いだと言いに来るのだろう。
知りうる言葉のなかでもっとも激しく痛い言葉をもちいて伊達を傷つけるだろう。
エイプリルフールだから。
わかっていても伊達が戸惑うのを見に来るのだろう。
そんなふうに考えていた伊達の元に、仏頂面が桃の来訪を告げに来た。



「何か言うことでもあるかよ」
先手を打って、伊達が尋ねる。
桃は黒目のすずやかな目元をひとうちして、
「好きだ、伊達」
当たり前のように、
おはようと言うようにそう言った。

伊達はひどく驚いた。
傷つけられるよりよほど悪い。
思わず伊達は身を乗り出して、
「桃」
自分でも舌打ちしそうなぐらいに余裕のない声で呼んだ。
「わかっているさ、エイプリルフールだろう?」
わかっているならなぜ、
「伊達、俺はお前が好きだ。たとえエイプリルフールがどうだろうと、お前に対してせめて誠実でありつづけたいんだ」

「好きだ、伊達」
「桃、俺はお前が好きだ」





伊達がどちらの意味で言ったのか、
伊達は最初から判断は桃に委ねている。
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邪鬼は母に似た面差しの雛人形を睨んだ。
なよやかで、薄く笑みともらせた口元が特によく似ている。
「母上」

お内裏様がまったく父に似ていないのが、なんとなく邪鬼にはおかしかった。
案外器用にうごくものだ、そんな事を思いながら桃は眉をふわりと張って富樫を見ている。

富樫は昔からあまり器用なタチではない。それは指先だけではない、生き様すらも不器用だった。
食事の当番をさせて、富樫がどうしていたか。あいにく桃は思い出せない。
出あってから数十年が経ち、今目の前でちまちまと餃子を包んでいる富樫の横顔は真剣で桃の眼差しにも気がつかない。
集中しているのだ。
口を結んで、険しいぐらいに目をきつくした富樫。
指は機械のように同じ動作を繰り返している。

ひたすらに餡をのせ、つつみ、折りたたむ。
その繰り返しをちまちま続ける富樫が、なんだか桃にはとても新鮮だったのだ。

富樫が視線に気づいたのはだいぶ後のこと。
「おい、しっかり手を動かせよ。飯がどんどん遅れっぜ」

ああ、桃は頷いてゆったりと微笑んだ。
飛燕の櫻髪が風に舞うのを、富樫は単に綺麗だと思った。
何か気持ちが湧き上がるわけでもなく、ただ綺麗だと思ったにすぎない。
「お前という男は、まるで美に耽る気持ちのない男だな」
「綺麗だとしか、思えねぇよ…」
困ったように富樫は太い腕でガシガシと頭をかいてみせる。

ただ、富樫の言う綺麗は子供のように単純だけれど、何よりの真心だとわかっているぶん飛燕をよろこばせた。

時候の挨拶から始まり、身の回りで起こった物事に触れ、それからまた近いうちに会おうという言葉で締めてある。

簡潔な手紙だった。
だが、伊達の好む色の紙を選び、わざわざ硯を寄せて、緑深い綾なる墨をたっぷり使って文字を綴ってある。
手間と、時間をかけて。

電話もある。
誰かに言伝てを頼んでもいい。
しかし桃は伊達へ手紙を送る。
何より伊達を震わすのは宛名、つまり伊達の名前。
その宛名が時折はやるように流れ乱れていたり、
また緊張しているようにかくばっていたり、

まるで今伊達を目の前にして呼んでいるようであった。
伊達の書斎のひきだしには、こうした手紙が詰まっている。
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