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男塾の描写練習をしていきます。 ツッコミ歓迎コメント歓迎
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「雷電先生、ぼく、これからブックオフへ行くんです。よろしかったらご一緒しませんか」
「うむ。共にゆこう」
「よかった」



「……館長どの?」
「わあ!」
あまりに真剣に読みふけっていたので、声をかけただけなのだが。
「すまぬ。集中をしていたのに」
「いえ、その、こんな、漫画、ちょっと興味があってパラパラって、あの、」
「どんな本とて、読んで無駄になるものではない。拙者先日手塚治虫氏のブッダを読み、感銘を受け申した」
「先生が、漫画」
「大変勉強になりもうした。して、館長殿は何を読まれているのか」
「……ガラスの、仮面です…」
「どれ、拙者も読んでみようか」
「一巻読み終わったので、先生が三巻に取り掛かったらぼくが二巻を読みます。お先にどうぞ」
「かたじけない」


『もしもーし、あ、伊達?どうしたんじゃ』
「虎丸。まさかとは思うがてめぇのところに雷電行ってねぇか」
『雷電が?いんや、来とらん……どしたんじゃ』
「ちょっと出かけるって言って、帰ってこねぇ」
『雷電だって遅くなる事だってあるって』
「昼出て行ったきりだ。もう十時にもなる」
『そんな心配することじゃねぇよ。ははぁん、おめぇ腹へってんな?だからカリカリするんじゃ』
「カリカリなんざ」
『しとるって。ま、雷電なら大丈夫だろうからおめーはご飯に玉子でもかけて食っとけ』
「………」




その頃雷電は丘の上で土下座していた。
「かような年頃の子をこんな夜更けまで…面目ござらぬ…」
「それで、ガラスの仮面面白かったかい」
「ええ、おじいさま」
「そりゃあよかった。さ、ご飯をお食べ。先生もどうぞ、さぞ足が疲れたでしょう」

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財布の底から折りたたんだ千円札が出てきた。
思わぬ収穫に雷電は喜んだが、さて何に使おうか。

「本でも買ったらどうだ」
伊達はそう言ったが、何しろ雷電の趣味の本ときたら高価だ。
民明書房の本はネタモノ扱いのため安いが、取り扱いがまず無い。
しかし伊達がすすめてくれたのだから何か本を買おうと雷電は決めている。

「古本屋に行ってみろ。……大衆的な」

そうして雷電は生まれて初めてブックオフに足を踏み入れたのであった。


千円札で買い揃えたのは、何気なく目に留まった手塚治虫のブッダ全巻。
「おお…これは…なんと……!!!」

虎丸が伊達へ差し出したのは甘酒の缶だった。
伊達は首を横へ振る。あまったるいのは嫌いなのだ。
「あったまるぜ」
「……」
虎丸がちびりと飲んで、あったかそうな白い息を吐いているのを見て伊達は受け取る。
「……明日がもっといい日だって。な、伊達」
風の音が強まるのを、伊達は耳を澄まして聞いている。

かた膝を立てて、そこへ肘をついて、動かないでいる。

ただ、耳を澄ましているだけ。

びょう、ぼぉ、
びょうぼう、

ごう、

強い風に伊達は昔の昔、憧れていた。
軽い自分の身をさらって連れ出してくれるのじゃないかと思っていたからだ。
今は送っている。
誰かの御霊をつれていくのをただ見守るだけ。

びょうぼう、
びょうぼう、
ごう、

殯の風がふく。
桃が逝って3ヶ月、富樫は自分の衰えを感じながら、ようやく理解した。

「…嫌がらせって、こういう事かよ」



『富樫、おまえに一つ嫌がらせをしてやるよ』
生前桃はそう言った。嫌がらせってなんだと富樫が噛みついても、笑うばかりでなにも言わない。

「こういう事かよ」

いつも桃の前で富樫は散った。そのたびに桃は深く悲しんで、心を痛めた。

「お前がいねぇで寂しいぜ、桃」



誰かがどうだと笑った気がした。
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