「一度でいいから、キスマークをつけたいんだ」
朝食時に何を言い出すのだこの男は。富樫はよそいかけていた桃のドンブリから飯をこそぎおとす。
「なんだ、少なくするなよ。お前の飯はうまいんだから」
「朝からボケてんじゃねえ」
舌打ちしながら富樫がドンブリを差し出した。と、その手首を桃がつかみ、ひきよせ、
ちょうど脈がこんこんと打つ手首へ吸い付いた。
チュウ、
鼠鳴きひとつ。ドンブリが桃の手に渡った時には、既に富樫の内手首にはうっすらと赤く痕がついている。
「あんがい綺麗についたな」
桃は嬉しい。
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