影慶が陰鬱に笑った、こうした笑みを見せる時、彼が不安定なのを邪鬼は知っている。
「邪鬼様ご覧下さい…肉が腐って、堪らない臭いでしょう」
笑いながら包帯を解いた毒手を見せつける、月明かりにもぬらぬらと、それは紫に変色していた。
「大事ないのか」
「ふ…邪鬼様のお役に立てぬようなら切り落とします、ご安心下さい」
「……そうか」
その物言いが少し、悲しみに苦いものだと影慶は気付いただろうか。
腐臭が強まった、邪鬼のすぐ傍で影慶は笑う。
「林檎は、地面に落ちる寸前が一番美味いそうですね……腐りかけが、」
影慶の舌が、邪鬼の指を這う、舐め上る。
「どうですか邪鬼様、試してみませんか」